2011年6月14日火曜日

結晶質岩の透水亀裂

岩の力学連合会による今年度の特別講演は、吉田英一先生の「地下環境と物質移動-岩盤中の透水亀裂と長期的挙動-」でした。

主に、結晶質岩の亀裂について地質的特徴を整理し、以下のような点を主張されていました。
  1. 湧水亀裂のセクション観察では、空隙に向かって母岩より結晶が成長している。
    shearされると充填鉱物が破砕されるが、日本でそのような物を見たことがないと言われていました。従って応力解法でできた空隙と言われていました。
    亀裂自体の成因には異論がありますが、確かに、現在のローカルな応力場と亀裂の方向によって生じた空隙だと考えます。以前にもUPしましたね。
  2. 若い花崗岩ほど亀裂が少なく、古いほど多いと言うことはない。亀裂充填鉱物のレイヤーが少なく、幅が狭い。古いほど多層となり厚くなる。
    亀裂の数については違うでしょう、と思って聞いていると、葛根田では亀裂が非常に少ないことを紹介され、1Maで頭打ちになっているというような話でした。案外若くして頭打ちになるんですね。
  3. 断層周辺では短い割れ目が増える。長い割れ目の数は変わらない。また、短い割れ目は低温、長い割れ目では高温の充填鉱物が認められる。
    長い割れ目をbackground亀裂と呼ばれていました。そうすると、緑泥石など高温充填鉱物ほど連続性が良いということになります。これは違和感ありますね。
  4. 母岩からのCa,Fe,Kの溶脱が充填鉱物のソースになる。
    これは比較的知られている内容ですね。
  5. 粘土充填物は(せん断ではなく)圧入であろう
    いくつかの充填機構があると思いますが、せん断構造のない亀裂に粘土が充填されている事もあります。圧入もあるでしょう。ラミネーションや級化層理も認められるそうです。見てみたいですね。
基本的に地層処分など物質移動を評価するための調査のようです。私がいたサイトもちらっと出ていました。
ここで、気になる点が一つありました。応力により開いたとするのであれば、今後、数万年の応力場変遷を推定する必要があります。それによって、透水性、透水亀裂の方向が変化するからです。しかも、できればスケールの小さな、ローカルな応力場の変遷を推定しないと行けません。できるとすれば地質屋しか考えられませんが、無理でしょうね。そこで、以下の2点が重要だと考えます。
  1. 影響の大きい移流が卓越するような開き方が起こるのは、どういった場合か評価が必要。
  2. 透水性が変化した場合でも機能は保証されるような設計を行うために、地質屋による吸着特性や亀裂の連続性・分布の評価が必要。
いずれも難しい問題ですが、地質屋の腕の見せ所でしょう。今、閉じている亀裂も、透水亀裂と同じくらい調べる必要がありそうです。
最近はこのような地質の仕事が少ないので、まずは先生の最近の論文を読み、リハビリを行いますか。


余談ですが、他の受賞記念講演は解析がメインでした。つくづく、変形に弱い自分が恥ずかしいと思いますね。こういう場に出席すると。こちらも頑張らないといけません。

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