2012年6月28日木曜日

地震基盤と工学的基盤

先日より試していたS波測定法に目途がたったため、その事について設計者と話をしていました。

 その中で、「そもそも工学的基盤面とは、どういう性質のものか?」と聞かれ、こう答えてしまいました。
 「それ以上深くなっても波形が大きく変わらない深度の連続面」

大間違いです。
 これは地震基盤の解釈に近いでしょうか。

 地震基盤の定義は吉田望「地盤の地震応答解析」によると以下の二つ
  1. 「局所的な地盤構成に関わりなく、ある地域では一様な 挙動をするであろう地層」
    つまり、表層部の影響を取りはらった地盤ということでしょう。
  2. 「構造物の耐震性を扱う際、震源での地震動の特性を反映させるための震源に近づく限界」
    これだけ読むと分かりにくいですが、「考慮すべき最長の周期よりやや長い固有周期をもつ表層地盤の深さ」 ということです。
工学的基盤はそれほど明確な定義はないようですが、「解析上、それより下の地盤は考慮しないことを意味している」とのこと。これを用いる根拠は以下の通り紹介されています。
  1. 「同一地盤でも構造物の固有周期に応じて基盤が仮定されるべきである」
    地震基盤の2の考え方と共通するところがあるようです。
  2. 地震基盤で観測波形データは少ないが、工学的基盤では多数ある。
     つまり、非常に深いデータは少ないため、データの多くある深度で地震動を設定するのが望ましいということでしょう。また、「地震基盤以浅の増幅特性を評価することが困難」とも。
実務的には、それぞれの基準が波形を設定した深度のVsで工学的基盤を決めているという解釈が良いのでしょうか?詳細は分かりませんが。実際、東京湾臨海部模擬地震波はVs = 300~500 m/s での地震動を想定しているようですし、MM21は Vs = 430 m/s だそうです。

今年の短期目標の一つに地震応答解析を挙げていたのですが、本質的なところはまったく進んでいません。こんな基本的な事くらい、即答したいものです。


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2014/2/21追記
工学基盤の1、地震基盤の2については、地盤工学会「ジオテクノート9地震動」に長周期の簡易な留意点が書かれています。
http://phreeqc.blogspot.jp/2014/02/blog-post_21.html



2012年6月27日水曜日

電子国土賞

国土地理院から第1回電子国土賞が発表されています。
http://psgsv.gsi.go.jp/koukyou/G-award/index.html

国土地理院の各種公開データを活用するソフトを表彰する制度だそうです。

受賞作のカシミール3D は15、6年前より使っていますが、メジャーになりましたね。当時は鳥瞰図を作って眺めるだけでも楽しいものでした。地形を表現するソフトはそれほど多くなかったと思いますが、個々の個性が光っていたように思います。Mac版のソフトもよく利用していましたね。Niftyには山と地図のフォーラムがあり、そこからは地形関連ソフト集の解説本も発売されました。

しかし、それらの進化には驚きです。
特にカシミール。今ではオンラインが前提の環境になりましたので、どこからでも電子国土のデータを意識することなく閲覧できます。全国の地形図(ウォッちず)はもちろん、過去の空中写真をボタン一つでシームレスに見ることができます。これは非常に使い勝手が良く、頻繁に利用しているプラグイン機能です。当たりでしたね。
このソフトは環境の変化に即時対応している感があります。そのあたりが受賞の一因ではないでしょうか。

後輩が使用している FieldAccess も見せてもらいましたが、使い勝手が良さそうでした。GPSトラックも書き出せます。今のところ、電子国土を参照できるモバイルアプリはこれだけでしょう。

第2回に向けて、新しいソフトが出てくるのでしょうね。 特にモバイル。期待しています。

2012年6月26日火曜日

field_mass モジュール その2

直交スライスは、field mass モジュール1つでは無理なようです。

2個使えばできました。要はセット数に応じて増やせば良いわけです。



 slice + isolines だと2×13断面 = 26モジュールいりますが、field math + constant shell + isolines だと3×2セット = 6モジュールで済みます。この差は大きい。


field_mass モジュール

先日悩んでいた field_mass モジュールの数式部分です。
以下で slice を回転、任意間隔で表示できるようになりました。

sin((Ax*cos(f1*pi/180)-Ay*sin(f1*pi/180)+f3)*pi/f2)

角度 f1 で軸を回転させ、Ax を座標変換する。 [cosθ -sinθ]{Ax Ay}T
f3 を加え、任意の距離だけすらす。
*pi/f2 で波長を整える。

まあ、ふたを開けると高校の数学レベルでしたが、何の入力を求められているのかを理解するまでに時間がかかりました。直交も一つのモジュールで可能でしょうか。続きは明日。

2012年6月24日日曜日

Particle Friction Coefficient and Material Friction Angle

ITASCA PFC3D の Getting Started に、安息角を表現するモデルがあります。

friction coefficient 1.0で angle of repose が35度、0.577で26度となっています。最初に見た時は「あれ?」と思いつつ、「安息角をせん断抵抗角にみなすのは、安全側だから良いか」などと、的外れなな事を考えていました。
文章を読み進めると、以下の文章が。
While this example is too small to draw direct conclusions about the relation between particle friction coefficient and material friction angle, it does demonstrate the way problem-scale properties can be related to contact parameters.
粒状体は要素の表面の friction coefficient を設定しなければならないんですね。当たり前ですが、連続体の考え方に固まっていると、そんな事も見えなくなっていました。土質力学を勉強し始めた頃に表面摩擦とせん断抵抗角の違いを勉強したはずですが、死んだ知識になっていますね。

このような話は 筑波大学の松島研より公開されている DEMseg のセミナー資料にも記載されています。分かりやすいですね。
 http://granular.kz.tsukuba.ac.jp/dem/cr01/cr01.html
 
ですが、表面の摩擦係数なんて、どうやって設定すれば良いのでしょうか?安息角の再現は乾燥させた場合ですから地盤の計算には使えないですよね。マニュでは三軸圧縮試験などを再現し、パラスタで決めるような考え方も紹介されていますが。

DEMは触ったことがないので、いろいろ分からない事があります。 少しづつ見て行きましょう。

2012年6月23日土曜日

MVSの限界?Winの限界?

C Tech の MVS は動作が軽快で良いソフトだと思います。

ただ、調子に乗って、モジュールを追加し過ぎると不具合の発生する事があります。古くから以下のような問題が知られています。
Limitations of number of modules / Disappearing Menus
昨夜も力技でモジュールを追加していたのですが、途中からフリーズするようになりました。

System Requirements には、64bitOS、メモリ12G推奨、6コアなどで速度改善なんて書かれていますから、native 64bit、マルチスレッド対応か?と期待して最新Ver.9.7を入れてみました。が、残念ながら変化なし。計算中も、単スレッドしか使っていません。どこかにマルチスレッドに対応させるチェックボックスでもあるのでしょうか?
http://www.ctech.com/?page=sysreq 

今日は、既存モデルに Slice モジュールを7断面追加した時点で、各種ダイアログが出なくなりました。6断面に戻すとOK。ソフト単体のメモリ使用量は1.2G 程度。このあたりが限界のようです。Array of Slices という Tips が公開されていますが、これらを使えば格段にモジュール数を減らすことが可能です。が、XY の直行配列以外に回転させる方法が分かりません。




ソフトやOSの限界を謳う前に、もう少し腕を上げる必要がありそうです。

2012年6月20日水曜日

多相流

油の汚染が計算できないか?と質問。

できません。いえ、私に能力がありません(ついでにソフトもありません)。

鉱物などの無機物には以前より興味がありましたのでコツコツやっていますが、有機物は分かりません。大学入試時に「おもしろいなあ」と思っていた程度で、それ以上の知識はないのです。温度による油が揮発する速度、粘りの変化、土粒子などに付着する程度、それらの調査法がまったく分かりません。モデル化の方法はある程度想像つきますけど。

 とりあえず、多相流のソフトを探してみましたが、少ないですね。
GETFLOWS は高価ですので最後に回しましょう。
GERAS3 は対策工のモデル化ができそうにないので、これも後回し。
UTCHEM を落としてみましたが、これも対策工や多層地盤のモデル化がイマイチ分かりません。単一層はすぐできそうでしたけど。

うーん。進みません。

2012年6月18日月曜日

地下空洞の限界深度

ためていた岩盤関連の文献を読んでいますと、面白い内容がありました。

亀村勝美(2011)地下空洞設計法の現状と課題について, 第40回岩盤力学に関するシンポジウム講演集, pp.31-34


u=(1+ν)/Eσ0a
ε=u/a=(1+ν)/Eσ0

σ0=γHを仮定すると、岩盤の弾性係数と設置深度Hより、坑壁ひずみがざっくり推定できます。さらに、弾性係数と一軸強度を関連付けると、そこに限界ひずみを持ち込むことができます。この文献では、それらの関係を整理し、500~600mあたりで設置限界深度に至るだろうと推定されています。
岩盤を連続体と仮定していたり、σcとEを一意に関連付けたりと、いくつかの仮定を用いて表現されています。大雑把ですが、こういった整理をさらっとこなせるところが凄いですね。素晴らしい。

 瑞浪超深層研究所では1000m掘削の予定です。現在は半分の500mです。さて、どこまで掘れるでしょうか。楽しみです。


 

2012年6月17日日曜日

「想定外」の違和感

NHK の MEGAQUAKEII を見ていて違和感があります。

東北地方太平洋沖地震のメカニズムの説明とともに、地震学者が「想定外」を二度と起こさないよう、必死で得られたデータを解釈しようとしている姿も描かれています。

この番組構成に少し違和感があります。
地震学者の責任感は伝わりますが、データを集めて自然現象を把握し、克服しようとする考え方・姿勢は以前と変わっていません。 いえ、これは重要な事です。しかし、残念ながら、その流儀だけでは「想定外」がなくなる事はないでしょうし、今回の「想定外」が正当化されているように受け止められます。地震発生時にも書きましたが、「これまでに経験したことのない・・・」「未曾有の大地震だから・・・」は技術論では理由になりません。http://phreeqc.blogspot.jp/2011/03/3_12.html

現段階で人間は自然を完全に理解できません。近づくことはできるかもしれませんが、それがどれほど近づいたのかは分からないのです。自然は46億年、人間の知恵はたかだか200~300年程度です。まして、近年得られたデータのみで過去や未来に挑むのは無謀です。データが自然のタイムスケール上での現況再現期間に対し、少なすぎます。せめて過去5千年程度のデータがあれば別ですが。

地質屋も根本は同じでしょう。が、どれだけ調べても自然は分からない事を知っています。ですから、 過去数千年のデータを採取し、痕跡を調べて妥当なデータを使おうという単純な流儀を取るのでしょう。当然、信頼性・定量性の向上といった課題はありますが、今回の規模を想定していた研究者は悔やまれているでしょうね。あるいは憤りでしょうか?私はというと、津波堆積物というものがどのようなものか詳細を知りませんので、話にもなりませんが。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110330-OYT1T00133.htm
http://unit.aist.go.jp/actfault-eq/

「契りきな かたみに袖をしぼりつつ 末の松山 波越さじとは」
有名なこの歌の波も「貞観津波」と関連していたようです。過去の痕跡を知る方法は地質以外にもあるようです。伝承もその一つでしょう。しかし、これらは定量的でなく、流儀が合わなかったため無視されたのでしょうか。あるいは利用する側の都合でしょうか。

 過去を知り、現在を知る。斉一説に似ています。両軸なくては未来の想定も片落ちです。
最終的にはその結果を利用(購入)する方々の意向次第になると思いますが。

2012年6月16日土曜日

S波測定 その2

HandyViewer SEISMOGRAPH Model-1816 からのデータ吸い出しです。
  • RS-232C接続。
  • ハイパーターミナルで読み込み設定(マニュに書いてあります)、キャプチャの開始。
  • HandyViewer でメモリーカードからデータを読み出す。
  • F5 I/F でRS-232Cを選択。
  • 先程読みだしたIDが表示されているので、Enterで送信。
事前にメモリーカードから読みこんで画面に表示して(本体のメモリーに書き込んで)おくところがミソ。ヘッダーはメモリーカードから、データは本体のメモリーから送信される仕様です(マニュに書かれておらず、悩みましたが)。

あとはEXCELでデータを加工してやればOKですね。

で、読み込みマクロを組んで試してみましたが、結果は微妙。それらしい所にS波の初動が来るのですが、P波の振幅差だけなのか判断付きません。P波の振幅が一致していないと、ダメなんでしょうね。

やはり、叩き方、腕なんでしょう。難しい。

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2012.6.23追記
EXCELを使った読み込み・表示マクロをUPしました。
https://sites.google.com/site/geochemist001/resources/primarywave

S波測定

P波測定で使用した2ch地震計で、S波が測定できないか試してみました。

使用したのは約20年前に購入されていた、OYO さんの HandyViewer SEISMOGRAPH Model-1816 。1chでも使用できますので、非常に手軽です。

早速、ピックを設置し、板叩き法と同様に壁面と平行に叩いてみました。
この板叩き法、本格的にはつるし柿を使用して一度だけ実施した事がありますが、失敗。綺麗な反転する波が出ませんでした。以降、サスペンション法を提案しています。赤本では価格も安くなりますので。腕の良い方は層境が分かりやすい板たたき法を好まれますけれど。

で、試した結果はというと、微妙。パッと見、叩く方向を反転したことで、見事に反転している波もありますがP波の影響で初動が分かりにくくなっています。波を見た時は「おぉ」と思いましたが、これではS波速度が分かりません。

なんとかならないか、と思いながら参考書を見ていますと、 波の合成でP波成分を消去できるとの記載がありました。物理探査学会「物理探査適用の手引き」p179-180です。なるほど、その手がありますね。S波も強調されるので一石二鳥です。

しかし、ここでまた問題が。波形データはメモリーカードに保存しているのですが、今迄、取りだした事がありません。画面で確認し、手計算で弾性波速度を出していたので必要なかったのです。しかし、合成するとなるとデジタルデータが欲しい。

続きは後日。



2012年6月14日木曜日

岩盤分類

岩盤分類にも色々あります。
昔は一つだけかと思っていましたが、支持のための分類、掘削のための分類、支保のための分類、などなど。トンネルを除いた土木構造物で、個人的に参考にするのは以下のものでしょうか。1960~80年代に考案された古い分類です。
  • 電研式・ダム基礎岩盤分類(田中の分類)花崗岩
  • 本四公団・橋梁基礎の分類(田中がベース)花崗岩、各種物性
  • 電研式・ダム基礎岩盤分類(菊地の分類)硬質岩~軟質岩、軟質岩はABなし
  • 日本道路協会・施工のための岩及び土の分類(土軟硬区分)と弾性波速度
他にも、岩種と弾性波速度より、リッパ掘削の可否を判定できる表(道路土工)がありますね。通常はリッパの可否で軟・硬を区分しますが、この表だと準備する機種の規格で変わってしまいますので、真の岩盤分類ではないようです。

以前、TEPSCO の地質屋さんと話した時に、岩盤分類の話題になりました。その方は菊地の分類を御本人より教わったらしく、私達の分類とのズレに驚いていらっしゃいました。当然、我々の方がズレており、それを理解していながら使っています。その場にいた他社の地質屋さんも同じようにズレを理解しながら使用されていました。
例えば、「概ね新鮮,堅硬であるが・・・長石類・有色鉱物がわずかに変質している場合もあり、・・・節理面は風化変質を受けて変色汚染されている場合が多く・・・」という表記では、CMと教えられました。が、正解はCHです。

田中の分類では、「ハンマーによって打診をすれば少し濁った音を出す」もCHです。が、実際は濁音が出たら通常の土木構造物調査ではCHと判定されない方が多いのではないでしょうか。基本的には、他社の報告書を見てもズレていますので、お客様の認識もズレている事が多いようです。いつから、どうしてズレたのか分かりませんが、変なスタンダードができているようです。まあ、土軟硬が 積算に関わっていますので岩級のズレに大きな影響はないのですが。

しかし、岩級から文献等のデータを利用して強度等を推定しようとすると問題でしょうね。たぶん、この辺りが曲者なのでしょう。ダムやトンネルを除く通常の土木構造物で岩盤の原位置せん断試験は実施しませんし、一軸すらしないでしょう。その場合、安全側として1ランク落として評価しておいた方が無難ですからね。その流れでズレたままになっているような気がします。
地盤工学会「原位置岩盤試験データベース(2008年度版)」では、学会基準の分類毎に物性が整理されています。基本は亀裂間隔と硬軟ですから、分かりやすいと思います。
こういった分類にも慣れ、徐々に修正していく必要があるのでしょう。

2012年6月13日水曜日

岩盤判定

施工時の岩判定は、コアとの対比ができ頭の中のリセットになります。

 コア観察時には、掘り方やオペさんの腕を考慮し、原位置の状況を推定しながら評価していくのですが、やはり見た目に大きく引っ張られる傾向があります。そのため、コアの方が実際より悪い評価になりやすいですね。掘削時にいくらか乱しますので。観察スケール・距離の問題もあるでしょう。

しかし、レアですが逆の場合もあります。 コアの方が原位置より数段良く見える場合もあるのです。
今日は他社さんの調査結果を、何故か私が現場で評価。堆積軟岩でした。汚れていない壁面での目視とシュミット・弾性波測定でチェック。結果、コアの方が原位置よりも良い評価をされていました。コアを見せていただきましたが、現場状況の推定は難しくも可能であり、残念ながら今回は他社さんの観察力不足のようでした。

設計時に声をかけていただければある程度フォローはできたと思います。しかし、調査・設計が完全分社化制になると、なかなかこういったフォローも難しくなります。調査は調査しっぱなし、設計は調査結果を鵜呑みで進めてしまいます。施工者や設計者に相談しながら調査を進めて行くのがBESTなのですが。

明日は我が身です。
コア観察にも、経験と想像力が重要になるのでしょう。今後のためにも施工時の岩判定には積極的に参加し経験を積むべきですね。



2012年6月12日火曜日

限界揚水量 その8

結局、限界揚水量の物理的意味として①、②はダメ、③目詰まりなど井戸周囲の変化というのが最もらしい答えです。

まあ、この表現として、 Imax=1/(15√k)を利用すれば一番シンプルで良いと思います。ウェルポイント工法便覧もこれが組み込まれた式が載っています。Sichardt の論文は見つけられませんでしたが、Preene and Powrie は手配しました。どの程度のスケールの話かは論文で確認しましょう。
 
揚水試験の実績を整理した結果、これで説明できればBESTですが、できなくても安全側ならまあ良いでしょう。今後の浸透流解析での水位固定の目安になるかもしれませんので。

2012年6月9日土曜日

限界揚水量 その7

③の目詰まりについては、その流入抵抗により限界揚水量が発生すると考えられるようです。


この場合、層・乱流ではなく、土粒子の移動に関する限界流速を考えないといけません。

これはいくつかの計算式や図が出ていますね。例えば以下の通り。
福川豊「実用深井戸工学」p 79、80
地盤工学会「地下水流動保全のための環境影響評価と対策」p147、148

後者は首都高速道路公団の発表論文が用いられています。
土橋ほか「目詰まりを考慮した通水井戸の設計」 地下水環境に関するシンポジウム'99, p79-96
通水連壁での復水側で目詰まりが生じることを実験的に図示されています。ただ、以下の注意書きがあります。
しかし、地盤の限界流速はD10やD20を指標として求まるものではない。仮定条件でも述べたように、対象地盤の有効間隙率の決定や均等係数の扱いおよび締固め程度(密度)の影響など多くの要因が存在する。ここに示した結果は、対象とした地盤条件下でのひとつの実験結果である。 
そうなんですよね。均一粒径で構成されているわけでないですから、代表粒径をどう選ぶかという小難しさがあります。実流速ですから、有効間隙率も考慮する必要があるのでしょう。

先のImax=1/(15√k) も同じトレンドであることから、この③の表現と解釈して利用しても良いのでしょう。まあ、これが上記の問題も全て含めた結果ですから、一番利用しやすいですね。

砂の移動だけでなく、砂利充填の不備による帯水層のゆるみも原因の一つのようです。そうなると、限界揚水量は地盤というより、個々の井戸の特性という意が強いのでしょうか。現場透水試験よりも揚水試験、小口径よりも大口径の方が透水性が高くなりやすいのは、こういった個々の影響が流入面積の増大により小さくなるからかもしれません。



2012年6月7日木曜日

限界揚水量 その6

②の層流・乱流がダメだったので、①を試すことに(本質ではありませんが)。

帯水層厚10m、水位固定境界まで500m、揚水井戸は完全貫入状態、2次元軸対象条件での結果です。まずはk=0.01cm/sで。


 直線ですね。そういえば、地盤工学会基準では算術目盛に変わっていますが、理由は書かれていないですね。

次はkv=0.1kH =0.001cm/sの条件。


まったく変化なし。まあ、境界まで500mあるので、変わらないのでしょう。
 ということは、境界が相対的に近ければ効いてくるということでしょうか?

で、25m離れた箇所に固定水頭を設けて計算してみました。海に浮かぶ島や河川の中州での揚水試験をイメージしてみました。

が、結果は同じ。直線状になります。

最後に、集水埋渠なら、縦方向の透水係数が効くか?と思い、2次元でやってみました。
透水係数はkH=0.1cm/s、kV=0.01cm/s、埋設深は4.4m。

ダメですね。
素直な計算では限界を作れないようです。
ダルシー恐るべし。

②の層流・乱流に引き続き、①もダメ。
残るは③だけですが、これは実験でしか確認できないでしょうね。

2012年6月6日水曜日

限界揚水量 その5

山本荘毅(1962)「揚水試験と井戸管理」を借りてきました。

S-Qの勾配を2直線で表現した場合の変化点を適正揚水量と呼んで良いのか?という提言がこの本の中にありました。当時より、2直線ではなく、曲線になることが知られていたようです(P121)。
3直線の場合はどちらが適正揚水量なのか分からないとも。ごもっともです。

また、限界揚水量(上記適正揚水量と同義)については、水位降下と揚水量の関係が、Reynold の実験による log h と log v との関係に似ていたことより呼ばれ始めたようですね。
レイノルズ数(Reynolds number)については、Re=10や1が臨界値として挙げられています。4については以下の記述があります。
P125
R=4(R=10とR=1の中間位の所に相当する)
P119第87図において、「対数目盛で中間」というのが、Re=4の根拠のようです。


福川豊(1966)「実用深井戸工学」でも、平均粒径を用いて測定した場合、Re<4の範囲で層流となることが書かれています(P51図49)。
こちらも、レイノルズ数(層流・乱流)と限界揚水量の関係は否定的。以下のように書かれています。
P51
ある揚水量を過ぎると、今迄の比例度と異つて水位の降下が多くなる。この変換点を、層・乱流の境界点であるとし、水位の降下率が大きくなったのは、乱流になつたからであると考えるのは、早計である。普通、一般に使用し、施工されている深井戸の流入部では、揚水量の極く少ない間は兎も角、殆ど乱流状態で揚水している。これは、計算してみれば、数字となって表われる事である。
 ということで、引き続き計算されています。井戸を中心に直径10mが乱流と計算されても、限界揚水量は現れない事例も挙げられています。他にも、面白いことが書かれていますね。

以上、2冊の共通する点は、
・層流・乱流は臨界レイノルズ数で区分できる(Re=1~10、中間4)
・限界揚水量と臨界レイノルズ数は物理的な関係がない。(グラフが似ているので間違う人がいた)
ということでしょう。

まあ、実際は違うけれども、Reynold の実験と形がよく似ていたので、「限界揚水量」は層・乱流変換点と見た人がいた。また、今もそう解釈する人たちがいる、程度のことでしょうね。
(部長様に言っても聞かないでしょうね。黙っておきましょう。)

2012年6月4日月曜日

限界揚水量 その4

その2で記載した、レイノルズ数4の根拠を確認するため、引用文献を見てみました。
 口頭発表のようですね。
高坂(2000)井戸限界揚水量に関する考察, 第35回地盤工学研究発表会, pp.1545-1546

面白い内容だと思います。
この発表内容だと Sichardt の動水勾配を使用した限界流速は粒子移動の方ですね。うまく整理されています。しかし、その適用限界は飛んでいますね。また、レイノルズ数4の設定根拠も書かれていません。このままでは使えないですね。
引用されている古いテキストでは井戸近傍のレイノルズ数を測っているようです。これは参考になりそうです。ただ、古い本で市場に出ていないものもあります。大学の図書館で探してみましょう。

手元にあった同じ著者の本、山本荘毅「新版 地下水調査法」では、以下のように書かれています。
p20
地下水の場合、Reの値が1~10の間で層流となり、100を超えると乱流になることが実験的に示されている。ここで、実例を挙げて計算をする。
 計算では、平均粒径が用いられています。
p251
井戸の揚水量が非常に小さい時、地下水の流れは整流であるが、揚水量が少し増すと井戸の周囲の流れは渦流になる。整流から渦流に移る限界の流量は限界流量Qcと呼ばれており、このときのレイノルズ数は約10である。すなわち、R<10では整流である。
レイノルズ数は10が良いのでしょうか?もう少しその背景のしっかりしている方が説明しやすいですね。
仮にレイノルズ数4や10が正しいとして、さらに平均粒径を用いるのが正しいとすると、浸透流で流速を出し、平均粒径を用いてReを計算すると、それが制限となり限界揚水量(地下水低下の限界)を求められそうです。
 うーん。でも、すぐに乱流になりそうですが。

2012年6月3日日曜日

限界揚水量 その3

地下水学会HPには、以下のようなFAQも掲載されています。
http://homepage3.nifty.com/jagh_torikichi/faq/faq_ans.htm#11-0
  揚水限界量を求める計算式はありますか?
手持ちのデータと下記資料を照らし合わせ、目的の揚水量を導く適当な計算式から計算されることを提案します。
参考図書1.(社)地盤工学会編:地盤調査 基本と手引き
    主に第23章 揚水試験と第22章 透水試験
参考図書2.(社)地盤工学会編 現場技術者のための土と基礎
シリーズ19「根切り工事と地下水ー調査・設計から施工までー」

参考図書2について水替え工法勉強会のHPに、以下のような明快な解説があります。すばらしい!デッドリンクになる前にコピーさせて頂きました。
http://www.mizukae.com/qanda/qanda-29.html

安全率について
投稿者:misawa 投稿日: 9月21日(水)11時30分24秒

HP大変興味深く拝見しております。

さて、ディープウェルの安全率についてお伺いしたいと思います。
「根切り工事と地下水」P207において、以下の記載があります。
”通常、シチャートの式は経験的に地盤の透水係数10-2cm/sでよく適合するといわれているので、Fs=1とすると、・・・”
ディープウェル1本当たりの、可能揚水量と必要排水量とを比較し、安全率を求めますが、安全率を設定する際の根拠となるような文献はありますでしょうか?上記に透水係数10-2cm/s云々とありますが、透水係数により安全率は異なってくるのでしょうか?

また、シチャート(シーハルト??)の式は、井戸ロスを考慮した揚水可能量を算出する経験式と見なせばよろしいのでしょうか?

以上、アドバイスお願いいたします。
Re:安全率について
投稿者:利光 投稿日: 9月23日(金)22時13分3秒

今回のご質問内容は、多くの技術者が疑問に思っている部分だと思います。
書店や図書館で専門書を探しても、満足できる答えは得られないでしょう・・・。
ところが、ネットサーフィンで、発見し、入手した文献に答えがありました。

文献名は「Groundwater Lowering In Construction」です。

以下、文献内容を引用しながら、私見を述べますので、参考にしてください。

■ディープウェル揚水能力算定式と透水係数の適用範囲
以下に「根切工事と地下水」に示されているディープウェル揚水能力の算定式を示します。
Sichardt(Sichart、シーハルト、シチャート、ジハルト)の式と呼ばれています。
ドイツ語読みであれば「ジハルト」が正解に近いのでしょうか?・・・。

q=2*3.14*rw*lw*√k/15*Fs (5.9)

q : ディープウェル1本当たりの揚水能力 (m3/sec)
rw: ディープウェル半径 (m)
lw: ディープウェル内への地下水の浸出部分のフィルター長さ (m)
k : 地盤の透水係数 (m/sec) ---> (cm/sec)ではありません。
Fs: 安全率 --- 「根切工事と地下水」でのみ、示されている?

文献によると(5.9)式は次のようにして導かれています。
単純明快です。

q=A*v
=2*3.14*rw*lw*k*Imax
=2*3.14*rw*lw*k*1/(15*√k)
=2*3.14*rw*lw*√k/15

A : 地下水浸出部分(流入部分)のフィルタ表面積
A=2*3.14*rw*lw
v : ウェル外周面における地下水のウェル内流入速度
v=k*Imax ----- Darcy's law(ダルシーの法則)
Imax : 最大揚水能力が得られる最大動水勾配
Imax=1/(15*√k)


文献によると、Imaxの算定式は1928年、Sichardtが多くのポンプ揚水井戸施工実績を調査分析して導き出した式(経験式、実験式)のようです。
(5.9)式がSichardtの式と呼ばれる理由が見つかりました。

さて、文献によると、最大動水勾配算定式 Imax=1/(15*√k) の適用範囲は K>1*10^-4m/sec = 1*10^-2cm/sec となっています。
1993年、Preene and Powrieの研究により、K<1*10-4m/secの場合、上式を用いるとImaxが過大に算出されることがわかりました。つまり、ウェル揚水能力が過大に算出されることがわかったのです。
Preene and Powrieの研究によって示されている「透水係数~ウエル口径~揚水能力の相関図」により試算した結果を示します。

  rw            k             q1               q2          q1/q2
-----------------------------------------------------------------
0.3m    1*10^-3m/sec    0.0040m3/sec    0.0040m3/sec       1.0
0.3m    1*10^-4m/sec    0.0012m3/sec    0.0013m3/sec       0.9
0.3m    1*10^-5m/sec    0.0002m3/sec    0.0004m3/sec       0.5


rw: ディープウェル半径 (m)
k : 地盤の透水係数 (m/sec)
q1: グラフから読取ったストレーナ1m当たりウェル揚水能力(m3/sec/m)
q2: Sichardtの式でFs=1として算出したストレーナ1m当たりウェル揚水能力(m3/sec/m)

Sichardtの式の適用範囲が K>1*10^-4m/sec = 1*10^-2cm/sec となっている理由が見つかりました。
q1/q2を(5.9)の安全率Fsとすると、K>1*10^-4m/secの場合はFs=1、K=1*10^-5m/secの場合は
Fs=0.5となります。

なぜ、このような重要な情報が、日本の専門図書に掲載されていないのでしょうか?
(5.9)式を「きわめて不思議な式・・・」と酷評した論説文を読んだことがあります。
恐らく、Sichardtの研究成果を調査されなかったのでしょう・・・。残念です。
「Groundwater Lowering In Construction」には他にも重要な情報が掲載されています。
文献引用ばかりの和書を読むよりも、参考になります。
問題は「お役所が、この洋書を設計根拠資料として認めるかどうか?」です・・・。

■井戸ロスについて
井戸ロス(井戸損失)とは井戸外周面水位と井戸内水位の差を意味するものです。
Sichardtの式は井戸外周面水位以深にあるストレーナ長をパラメータとしてウェル揚水能力を算定する式です。
したがって、井戸ロスを考慮したウェル揚水能力算定式ではありません。
なお、井戸外周面水位は井戸干渉によって変化しますので、群井戸の式で算出してください。

以上
この中の、Imax が使えますね。
全体的にはP. M. Cashman and M. Preene (2001)Groundwater Lowering in Construction :A practical guide, p214~215 のことを解説されています。この本、今年8月に 2nd Ed. が出るようなので、この個所がそのまま残るかどうか分かりません。ただ、「根切り工事と地下水」は有名な本ですから、根拠には使えるでしょう。Sichardt とPreene and Powrie の文献、早速注文しましょう。

2012年6月2日土曜日

限界揚水量 その2

整理すると、以下の3点ですね。
計算上は①透水係数が小さくなる、実際は②層流から乱流になる、③目詰まりが生じ始めている。

①については先日の通りです。
②は、ある範囲の粒径で構成される多孔質媒体で、レイノルズ数がいくつ以上で乱流になるかという問題です。私は水理学を知りませんので、そちらの方は難しいですね。限界流速を動水勾配にすれば、基準が出てきそうですけど。いずれにしても、これは③とも関連しますが、多様な粒径で構成される地盤について代表値を選定するなど、何か小難しい簡略化を挟まないといけないのでしょうね。
③は昔の基準では数字が示されたものがありましたね。通水井戸などでも基準がありそうです。

②③については、地盤工学会のテキストに詳しい解説があります。レイノルズ数4の根拠については文献を確認しましょう。

ただ、東北農政局さんでは、限界揚水量は日本独自の評価法で、実際は折れ線でなく曲線で表されると発表されています。図4が理解できませんが。どういう意味でしょう?
http://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/tyotei/t_seika/pdf/h20seika_10.pdf

限界揚水量

限界揚水量の発生要因を考えています。

先日、うちの部長様が経験則を持ち出し、「30年の経験上、水位を帯水層の○○%低下させると限界揚水量になる」と豪語してしまったため、お客様に「根拠を出して下さい」と返されました。当然の返しです。

 で、根拠を出せる訳もなく、別の方が新たに揚水試験結果を集め整理することに。


文献を調べても出てきませんし、人に聞いても色々な考えが出てきます。
調べてみると、地下水学会のHPに似たようなFAQがありました。
http://homepage3.nifty.com/jagh_torikichi/faq/faq_ans.htm#11
限界揚水量に学術的根拠はあるのでしょうか?
限界揚水量は、段階揚水試験時の揚水量と水位変化を両対数グラフにプロットした際の屈曲点(急変点)における揚 水量のことです。したがって限界揚水量を上回るとわずかな揚水量変化で水位変化が大きくなります。一般的な井戸公式に従えば、透水係数が小さくなることを 意味しますが、実際には井戸周辺の流速が大きくなり非ダルシー流れ(層流から乱流へ)になり抵抗が大きくなるという解釈や、流速の増大にともなって帯水層 を構成する粒子移動が大きくなり目詰まりが生じ始めているという解釈が一般的です。
限界揚水量の通常80%程度を適正揚水量としているのは、後者の立場にたって帯水層を破壊せず、泥だまりへの土砂の流入を極力おさえながら、なるべく多量の揚水量を得ようとする経験的な方策といえます。したがって、根拠の無い数字とは言えません。
経験的に80%という数字はOKなので、100%の限界揚水量の値もそれなりの根拠があるだろうということでしょうか?やはり明快な学術的根拠はないようですね。

計算でチェックするなら、前者では鉛直透水係数を小さくし、それが卓越するほど(水位が低下するほど)流量増分が小さくなるということができるかもしれません。試す価値はありそうです。
後者では流速のチェック程度でしょうか? さすがに、多孔質媒体における層流・乱流は分かりません。なにかあるような気もしますが。

2012年6月1日金曜日

鉛直方向の透水係数

砂礫地盤の鉛直方向の透水係数を求めたいという問い合わせがありました。

聞けば、鋼管矢板井筒内の揚圧力を計算したいとのこと。
ボーリングで求める透水係数は「水平方向」と地盤工学会の解説書に書かれているため(厳密には鉛直方向も含まれていますが)、鉛直方向が知りたいということでした。

それなら、「鋼管内を掘って揚水すれば求められるのでは?」と返答しましたが、どうでしょうか。乱れているので、参考程度の値にしかならないのかもしれません。しかし、ボーリングで礫層にケースを打ち込んで調べるよりは規模が大きいため、相対値として良い値が出そうです。この辺りは何か基準や研究があっても良さそうですね。

私が論文で見たことがあるのは、岩盤をブロック状に切り出し、3方向の透水性を調べる装置。マイナーです。また、砂や粘土であれば、ミニ供試体+三軸圧縮試験装置でも可能でしょう。
土砂の現位置試験検索してみると、以下の試験装置が引っかかりました。東京ソイルさんです。礫は厳しいかも知れませんね。発想は、上記の鋼管での試験と同じです。
http://www.tokyosoil.co.jp/pdf/g-08.pdf

計算ツールは対応していますので、機会があれば試してみましょう。