2012年6月6日水曜日

限界揚水量 その5

山本荘毅(1962)「揚水試験と井戸管理」を借りてきました。

S-Qの勾配を2直線で表現した場合の変化点を適正揚水量と呼んで良いのか?という提言がこの本の中にありました。当時より、2直線ではなく、曲線になることが知られていたようです(P121)。
3直線の場合はどちらが適正揚水量なのか分からないとも。ごもっともです。

また、限界揚水量(上記適正揚水量と同義)については、水位降下と揚水量の関係が、Reynold の実験による log h と log v との関係に似ていたことより呼ばれ始めたようですね。
レイノルズ数(Reynolds number)については、Re=10や1が臨界値として挙げられています。4については以下の記述があります。
P125
R=4(R=10とR=1の中間位の所に相当する)
P119第87図において、「対数目盛で中間」というのが、Re=4の根拠のようです。


福川豊(1966)「実用深井戸工学」でも、平均粒径を用いて測定した場合、Re<4の範囲で層流となることが書かれています(P51図49)。
こちらも、レイノルズ数(層流・乱流)と限界揚水量の関係は否定的。以下のように書かれています。
P51
ある揚水量を過ぎると、今迄の比例度と異つて水位の降下が多くなる。この変換点を、層・乱流の境界点であるとし、水位の降下率が大きくなったのは、乱流になつたからであると考えるのは、早計である。普通、一般に使用し、施工されている深井戸の流入部では、揚水量の極く少ない間は兎も角、殆ど乱流状態で揚水している。これは、計算してみれば、数字となって表われる事である。
 ということで、引き続き計算されています。井戸を中心に直径10mが乱流と計算されても、限界揚水量は現れない事例も挙げられています。他にも、面白いことが書かれていますね。

以上、2冊の共通する点は、
・層流・乱流は臨界レイノルズ数で区分できる(Re=1~10、中間4)
・限界揚水量と臨界レイノルズ数は物理的な関係がない。(グラフが似ているので間違う人がいた)
ということでしょう。

まあ、実際は違うけれども、Reynold の実験と形がよく似ていたので、「限界揚水量」は層・乱流変換点と見た人がいた。また、今もそう解釈する人たちがいる、程度のことでしょうね。
(部長様に言っても聞かないでしょうね。黙っておきましょう。)

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