2012年10月28日日曜日

Win8 とタブレット

PC屋で Win8 搭載機を見てきました。

Win8 のタブレット(キボード外れるタイプ)が気になっていたのですが、近くのショップには置いていませんでした。残念。ネットで見る限り、まだ高いですね

i5、i7 なら、仕事で充分使えるでしょう。そのうち、ソフトもタッチに対応してくるでしょうね。スマートフォン と Win8 タブ(+マウス)さえあれば良いのですから、iPad、 Android タブ の必要性がなくなると思います。 持ち運びや取り出しが楽になりそうです。

21.5型のタブレット?ディスプレー?がONKYOから発売。これ、打ち合わせ時にも使えそう。重たいかな?http://www.jp.onkyo.com/news/newproducts/pc/20121022_tw21a/index.htm
ソニーの20型は発売延期のようです。http://www.sony.jp/vaio/products/VJ21/

個人的に気になるのは、Win8でのコンパイル後の速度と精度。先日、Win8対応VF2013の提供が開始されましたが、コンパイラー変えるだけで結果が微妙に変わりますからね。速度も早くなれば良いですが、あまり期待はしない方が良いでしょうね。

色々可能性が広がりそうなOSですが、ま、当分はハード構成やソフト対応状況、献身的な方々のスレ、価格変動を見守りましょう。

孔内発破の効果 その2

孔内発破の効果について問い合わせ。

起振エネルギーが高くなるので、波が明瞭になるのではないかと言われました。その通りです。

しかし、孔内発破は、あくまで地表から波が届かない深い位置の情報を得るために実施するものだと考えます。その目的が満たされるのであれば、調査にお金をかけるべきだと思います。
http://phreeqc.blogspot.jp/2012/09/blog-post_15.html

いくらエネルギーが高くても、波が計画高に達しない、浅い位置しか通らないといった孔内発破は無駄ということです。例えば、地表から20~30m付近を通る波の読み取り精度を上げても、50~100mに計画されているトンネル設計の精度は上がらないということです。欲しい深度の精度を上げることを、まず考えるべきでしょう。


2012年10月27日土曜日

技術者として通じるもの

水平ボーリングの孔曲がり(上に曲がる)は、よく知られています。

ですが、今までなぜそうなるかを明快に仰った方は、私の周りにいらっしゃいませんでした。回転方向が関係しているだの、軽い方へ向かうだの、曖昧な考え方ばかりでした。

今日、超ベテランオペさん(今は助手をされています)と話をしていたところ、その話題になりました。その方、「私も長い間気付かなかったのですが、あれはスライムが下に落ちて枕になるんですよ」とキッパリ。なるほど!そりゃそうだ。

この方と話していると、面白い。
温泉ボーリングやワイヤーラインを一通り経験なさってます。もちろん、トラブルも多く経験なさっていますし、それらの原因や回復方法も身につけられています。
当然、コアにもこだわりがあり、昔は弟子が手を抜いたコアをあげると、コア箱ごとひっくり返し、掘り直しをさせていたそうです。今は何も言わないそうですが。

以下、その方の言葉です。

「頭の良い人には生産性ではかなわない。しかし、困った時に強いのは叩き上げのように思う。」
「今の生産重視は技術者が育ちにくい。」
「人のやりたがらない仕事をしなさい。」
「自分のやり方と異なるやり方を言われたら、試してみなさい。人の話に耳を傾けなさい。」
「手を抜くのが一番嫌い。」

ボーリング掘削技術についての話でしたが、技術者として手本になるものがあると思います。この方の言葉、 忘れないようにしましょう。



2012年10月26日金曜日

おかしな設計者?

もうひとつ、おかしな設計者?の話。

私は直接関与していないのですが、耐震補強を目的とした設計のお仕事がありました。残念ながら既存のボーリングが深度15m、N値20程度で止まっています。Vs = 300m/s の土層分布深度を把握したいということで、他支店より表面波探査の依頼がきました。

15mで既に表面波探査の限界に近付いていること、地形や層厚を考えると、もう少し深い箇所まで調べる必要があることから、「表面波は無理、ボーリングが必要」と仲間内で話をしていました。それでも、設計者の要望は表面波だったようです。

後輩が2日かけて実施、別の支店で整理、そして結果が設計者に届いたようです。案の定、最深部で200強の速度、工学的基盤まで波が届いていません。しかし、その絵を見た設計者、「300m/sの層が分からないので明示してほしい」とのこと。
先輩も後輩もみな驚いていました。堂々と言われたようなので、本気なんでしょうね。

お客様に提案して後に引けなくなったのでしょうか?それとも本気で 300m/s の絵が書けると思ったのでしょうか?実際のところは分かりませんが、色々想像してしまいました。

歳をとって経験を積むのは良いのですが、それでも知らないことを自覚する謙虚さ、後輩技術者でも教えてもらえることの貴重さを忘れてはいけませんね。



2012年10月24日水曜日

切土と標準勾配

ある調査計画に対し、チームTOPの設計者が納得し、 お客様も納得され、現場が動き出しました。

調査が順調に進行し、ある切土計画箇所に機械を据えた夜、設計者から指示。

「そこのボーリング、不要。中止しよう。」

どうも、設計担当者が変わったようです。「標準勾配で切るから、調査は不要」とのこと。
現場を見ていない、提案書を確認していない、モノレール仮設や機械を据えたと聞いても「調査不要」の判断を下されたのは初めてでした。正直、驚きました。まだ 社内にこのような設計者?がいることに。


論外なので却下しました。


でも、どのような地質断面モデルに対しどの程度の標準勾配を描かれていたのか、少し知りたいですね。この方の過去の設計、見てみたいものです。案外、私の取り違えかもしれませんし。


掘ってみると熱水変質帯や破砕帯が確認されましたので、いくつかある切土計画箇所の中では一番問題となる箇所となりました。結果論ですが、調査しておいて良かったということになります。

ま、とりあえずは、お客様に晒す前に食い止めておくことができて良かったと考えるべきでしょうね。


 いや、驚きました。





2012年10月23日火曜日

比抵抗と地山分類

以前、お客様から、「比抵抗探査結果は地山分類に使えるの?」と直球を投げられました。

2次元比抵抗探査は古い手法だと思うのですが、屈折法弾性波探査のように、地山等級に直結して評価された例は少ないようです。

鹿島出版会「地盤の可視化技術と評価法」には、その例が若干載っています。「トンネル毎に差があるなー」などと思ってみていますと、それとは別に、ちょっと変わった評価法が載っていました。
間隙率、飽和度を弾性波速度、比抵抗値と関連付け、それらを連立させて同定するというものです。面白いなーと思って出典を見てみました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejf/62/4/62_4_603/_article/-char/ja/

コアの試験値との関連づけであるため、式中の亀裂の影響の取り込み方が明確でない点のみ引っ掛かりました。ただ、施工時の支保実績との間に良い相関が認められるなら、実務的には無視しても差し支えないでしょう。参考書に載っていますので、ある程度実証済みなのか、データを集めている段階なのか分かりません。ま、この手法に限らず、比抵抗の利用について今後の展開に期待しましょう。

2012年10月21日日曜日

分業と品質

BTV を自分で測定する方が少なくなりました。

いえ、BTVに限らず、孔内試験をオペさん任せにする方が増えています。システマティックに処理する方法を否定するわけではありませんが、そういう流れになっているようです。

上がったコアを見てすぐに物事(サンプリングや測定深度、区間、荷重ステップ、制御方法など)を決めていかないと、欲しい所でデータが取れません。自然は私の理解を常に超えていますので、コアを見ながら刻々頭の中でモデルを更新し、説明しやすい位置を決めて試験をすべきだと思います。ま、そんなことは見なくてもできるという方もいらっしゃるのかもしれませんが。
オペさんとに知恵を借りながら試験をするのが好きですし、判断が容易なら、オペさんの休みの間に試験をしてしまうことで負担をかけたくないという思いもあります。

先日も、朝、先輩オペさんが来るまでに BTV をやりきって待っていました。
で、来られたオペさんと話をして愕然。他支店では(正確には、ほぼ私以外では)、BTV 作業はすべてオペさんにお任せのようでした。しかも、データ処理はパートさん任せの方が多いようです。シュミット上の亀裂の分類はどうするのでしょう?露頭との比較は?
露頭を見て、コアを見て、画像を比較しながら、せん断亀裂や断層の延伸方向を決めるとか、変質帯の方向を推定するといったことは、殆ど実施されないようです。それらの比較が重要ですし、そこに技術者としての主張、BTV を手段として使用する目的があると思うのですけど。
ひどい方は、コア観察を他人に任せる事があるようです。地質屋さんはコアや孔内試験にこだわりのある方が多いように思っていたのですが、そうでもなかったようです。案外、他社でも分業制、流れ作業が出来上がっているのかもしれません。

それらが同じ対価になるのであれば、短期的には流れ作業の方が確実に利益が上がります。地質のような分かり難いものの場合、ある一定の(=平均的な)品質さえ満たせば、対価は頂けるのです。利益の面から考えると、全体のレベルが上がらなければ、時間とお金をかけて平均以上に上げる必要はないことになります。サラリーマンと技術者の良心の狭間で、現在の不況を背景に妥協点を考えると、業界全体そのような所に落ち着いているのかもしれません。

しかし、手を抜き続けると、次第にカンが鈍ると思います。上手く言えませんが、何かが抜けていくように思うのです。
ノルマ(利益)は確保しつつ、泳げる範囲で手と体は動かし続けましょう。

2012年10月20日土曜日

帯磁率とγ線強度


10年前、先輩が「断層破砕帯では他個所よりγ線量が小さくなる!」と騒いでいたことがありました。

当時、社内では「γ線量は破砕帯で高くなる場合がある」と考えられていました(α線はかなり高くなると考えられていました)。それを先輩は真っ向否定。
残念な事に、先輩の説明が曖昧で、確たる根拠も出されなかったので、まともな議論にならなかったのを覚えています。

個人的には、温泉地帯など熱源のある箇所での調査では、fracture zone での噴気などの影響があり、自然放射能探査は有効だろうと考えています(その様な現場では移流拡散モデルを考えると、説明できると思います)。しかし、通常のフィールドでは表層の間隙率や粘土鉱物含有量(ソースの吸着)に影響されていると思われます。つまり、断層箇所で線量が高くなるとは限らないと考えています。

今日「物理探査」を読んでいると、それらに関わる論文が掲載されていました。
吉村ほか(2012)断層破砕帯における帯磁率異常に伴うγ線量の変化, 物理探査, Vol65, No.3
断層破砕帯で帯磁率とγ線を測ると、前者は高く、後者は低くなることが報告されています。室内実験の結果、FeO の含有量が多い場合、細粒分が多い場合にγ線の遮蔽効果が高くなるという結論でした。
ただ、断層でなぜ高帯磁率を示すかが書かれていませんでした。なぜでしょう?ガウジが常に湿気ていることで、磁鉄鉱が赤鉄鉱や褐鉄鉱などに変化(風化)しにくいのでしょうか?地質屋としては引っかかる箇所ですが、物探屋さんには興味のない箇所かもしれません。

ま、よく分かりませんが、10年がかりで一歩前進したような気がします。
少なくとも、帯磁率計は欲しいですね。約30万。買ってもらえないでしょうか?

2012年10月19日金曜日

コア箱も変わった?

ボトムに限りませんが、水を絞ってコアリングすると、コア周囲に泥壁が張り付いたようになることが多くなりました。ポリマー材を使っても改善しません。

コア写真をとるには、それを洗い流す必要が出てくるのですが、最初は皆さん苦労していたようです。
私はコアを納める前に、軒樋の中でパックを破って洗っていました。しかし、それではコア箱に移す段階で崩れることが多い。せっかくきれいに採ってもらったのに、写真に撮る前に崩してしまうのはもったいない!ということで、コア箱の中で洗うようにしました。しかし、それでは水がたまってしまします。コア箱を濡らすと腐りも早くなります。
ある時、先輩がコア箱にドリルで孔をあけて排水していました。これは良い!とまねてみたものの、毎回あけるのは面倒。

しかし、他にコアを崩さず洗う手段がないため、孔をあけ続けていました。最近になって、「こんなにも不便に思っている人がいるのだから、穴空きコア箱があるはず」、と思って探してみると、ありました。昔からお世話になっている、マスダ商店さんです。しかも価格は変更なし。なぜ早く気付かなかったのか?
http://www.masuda-s.jp/?cn=100011
最近これを使いだしたのですが、便利。コア箱にビニールを敷いてコアを入れ、 パックを破り、水洗い。気持ち良いほど排水してくれます。現場で観察してから持ち帰り、孔の部分だけ重ならない様に積み重ねます。1日経てば大抵乾いていますね。
難点と言えば、洗ってから持ち帰りまでの時間が短いと、コア箱を積み重ねた際に、下のコア箱が汚れる点でしょうか?今のところ、観察が終わるまで時間がかかっていますので、大きな問題にはなっていませんが。

これ、昔からあったように思えます。私が知らなかっただけで。
もう少し使ってみて、腐り等の問題が出ないか見てみましょう。


腕とプライド

コアリング技術の変遷について、お客様と現場で話していました。

お客様、「なぜコアがビニールに入るのか不思議」とのこと。
先輩オペさんがダブルコアチューブを分解し、説明されていました。ビニールに入るようになって、もう30年位経つそうです。結構古いんですね。私も、昔は不思議でした。地質調査技士の試験の前に色々教えてもらったことを思い出しました。

説明の中でビットの話になりました。最近では、ボトムを使うのがほぼ常態となっており、コアが以前よりも格段に乱れず、流れず取れるようになっています。岩盤中の粘土や破砕部もほぼ100%取れるようになっています。地すべり粘土のように、粘土と岩盤も連続して乱れずに取れるようになっています。ま、道具が進化しても使うのは人間ですから、腕がいるのだと思いますが。
ただ、他社のコアを見ていると、一昔前のコアを堂々とあげられる所も残っているようです。無水掘りのコアもたまに見ますね。その様な会社とは一切お付き合いしたくありませんが。

ネットを見ていたら、ボトムや穴空きを使ったコアの例が紹介されていました。
チコウさんという会社のようです。お付き合いはありませんが、こういった技術をオープンにされているのは珍しいですね。ま、市販されていますし、それだけ一般化しているということでしょう。
http://www.chicoh.co.jp/ipage/chicou_ezdrill.pdf
マイカイのは以前書いたGWSインプリでしょうね。
http://phreeqc.blogspot.jp/2011/06/blog-post_21.html

道具、そしてオペさんの腕とプライド。
皆で良いものを作る、一緒に仕事をするという一体感が、現場に生まれます。
例え小さな現場でも、良いものです。


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2012/10/23追記

今日、残念なコアを見ました。
腕の良くない方は、ボトムでも流してしまうようです。
やっぱり、道具を選んで使いこなすのは難しいんでしょうね。



2012年10月13日土曜日

粘土でCUB?

グループ会社の方からヘルプ。
ある調査業務を請けたそうですが、よく分からないとのこと。

この方、よく調査方法や考え方を聞いてこられます。できないなら請けない方が良い、少なくとも、よそに迷惑をかけてはいけないと思うのですが、ま、グループ会社ですし、他社さんの事なので。できない会社が仕事を奪える発注制度にも問題があります。

送ってこられた数量表を見ると、特に難しいこともない普通の調査でした。孔径、サンプリング、試験の考え方などひとつづつ説明しました。1点、粘土でCUBになっていましたので、「土質を見てから変更してOK」と言っておきました。

翌日、調査提案の資料をお客様から頂いたようで、それを私に送ってこられました。どうも、当社の設計者の提案だったようです。それがお客様、調査会社をスルーして、私の所に。色々問題がありますが、ま、世の中そんなものです。

内容を見て、納得。圧密を弾塑性FEMで解くため、CUB試験を提案されていました。cam-clayなどを使いたいので、CUBを提案されたのでしょう。CUBとは何ぞや?という方に、この提案の意味を初めから説明するのはさすがに面倒なので、「がんばって!」とエールだけ返しておきました。
設計方針を理解すると、調査内容にいくつか問題点も見つかりましたが、たぶん気付かずに全て仕様通りに実施されるでしょうね。CUBやるのでcφ設定したり。で、当社の設計者に全て帰ってくるでしょう。地元企業を潤す方針は良いのですが、最低限、能力のある(技術者が所属する)会社に仕事を振り分けてもらいたいものです。

という私も、有効応力解析を完全にモノにしていませんので、偉そうなことは言えません。今年度の短期目標の一つに挙げていましたが、まったく進んでいませんし。
ちょうど良い機会ですので、手を動かしてみましょう。

2012年10月12日金曜日

CAD と GIS

朝から先輩が騒いでいました。

新旧の測量平面図がずれるとのこと。
設計した図面を新しい測量図面に載せかえると、微妙にずれるので気がついたようです。見てみると、確かに微妙にずれています。昔の手書き図面だったら分からないレベルでしたが。

測量を引き継いだ方に聞いても原因が分からず、前担当者に聞いていただくことに。
結果、平面範囲の追加作業時に用地の話が出たため、改めて世界測地系にあわせこんだのが歪んだ理由の一つのようです(腕の影響の方が大きいかも知れませんが)。

CADで図面を扱っていると、座標が(見た目で分からないほど)ずれていることはよくあります。 例えば、2点で座標をあわせ込んだCADデータは、それ以外の範囲で微妙にズレることが多いですね。
また、扱える小数点以下の桁数でもズレます。測量屋さんの話では、国調のデータなどは6ケタ以上あるので、3点であわせると4ケタぐらいの誤差に収まるそうです。が、役所のサーバーが6ケタ扱えないとか、扱えても3ケタまでしか吐き出せないとかでズレるようです。
CAD の種類や Ver でズレる事もあります。測量CAD>地質CAD>設計CAD>測量(用地)CADに変換をかけていく段階で、少しずつズレていき、最後の一番ズレては困る段階で1cm以上ずれることもあるとか。

全ての CAD で測地系と座標を関連付けて管理・変換可能であれば良いのですが、現段階ではそうなっていません。GIS と CAD が1つのソフトになれば問題ないのですが、全ての CAD となりますとハードルは高いでしょう。安くて軽快さを求めているユーザーが多いのは間違いありませんので。

国交省から平成19年に「CAD-GIS連携の手引き書」なるものが出ています。完成図をそのままGISデータとして常に更新・共有していこうという理念のようです。最初からソフトベースでCADとGISを融合させるのではなく、変換して GIS データにするというものです。
どこまで進んでいるのか知らないのですが、とりあえずはこういった手法に頼らざるを得ないでしょう。



岩盤すべりの3次元モデル

岩盤すべりの3次元モデルを作っています。

といっても、複数のボーリングで認められた弱面と地形の連続性チェックに使用しているだけで、安定計算は二次元(の予定)です。
岩盤すべりの場合は、ブロックをはめ込むベースに地質構造を考えた方がシンプルで説明しやすいと思います(岩盤を相手にする場合は地すべりに限りませんが)。3次元であれば、与えた情報の矛盾点もすぐに分かります。コレ、便利なんです。

今回のモデルでは観察された弱面を3面入れており、それらが複合してすべり面を形成していると考えていました。面で抜けやすい方向と、観測による移動方向・深度も大体あっていること、ブロックの平面上の中心がやや薄くなると予想し、実際その通りであったこと、高角断層付近で悪いコアが連続するだろうと予測し、実際その通りであったこと、低角すべり面の背後の延長上で低角の破砕岩+粘土が確認されたことなどから、モデルは正解に近いだろうと考えていました。

しかし、よく見ると、サーフェスがブロックを大幅に超えて地表と交わっている箇所があり、その箇所の修正が必要でした。PCに私のモデル化の矛盾を指摘されたのです。
その箇所は思想がPC上のモデルになっていなかっただけで、そこに地形なりにもう一面作ってやっれば、引っ張り亀裂の発生している方向、コアの途中の破砕部など、より矛盾なく説明できるようになりました。ありがたい。
 
このように、3次元で可視化しないと気付かない事もあります。2次元だと誤っているままという事も多々あるでしょう。それらが全て計画安全率1.2の中に押し込まれていると言われると、そうなのかもしれません。「地すべりって、そんなものだ」と土研帰りの方も言われていましたが、確かに、ヒトの2次元解析の精度はそんなものなのでしょう。

ただ、3次元モデルにも現段階での弱点というか、実務上の困る点があります。モデルを見れば、3次元安定計算の必要性が直感的に理解できるようになります。しかし、そのまま3次元で進めると、設計段階で対応してもらえなくなるのです。いえ、技術的には可能なのですが、まだまだ実務的に効率よく(基準書通りに物事を決めて)利益を生む段階にはなっていないようで、設計者は嫌がります。今まで2次元でできていたものを3次元に変えるのは、お客様も慎重です。両者とも、「普通」と異なるをするのは問題と感じるのかもしれません。本来は設計技術者の腕の見せ所だと思いますが。
若い設計者を捕まえることが短期的、基準(安全率)を作ることが長期的な解決法だと思います。今年度より、土研の研究で3次元を扱っているようですが、設計・施工側の問題の解決も同時に行わないと、実務では流行らないでしょうね。ま、地すべり学会でも動きはないようですし、今のレベルの土研資料でもある程度の前進ですから、とりあえずは4年後の結果に期待しましょう。
http://www.pwri.go.jp/team/landslide/theme.htm

もう一つ。測量。
平面測量の結果を3次元で欲しいとというと、嫌がります。ま、分からないでもないです。作業量が増えますので。今日も、3次元浸透流で使用すると言いましたが、断られました。3次元の計算に使うのに、2次元の情報を提供されても困るのですけど。ま、近いうちに対応せざるを得ないようにはなるでしょうね。


このように課題?はありますが、自分のツールの一つとして装備しておくことは必要でしょうね。


2012年10月11日木曜日

発破

火薬手帳を復活させました。

昨年、12月に講習の時間をとるのももったいなかったので、失効させていました。
が、すぐに必要になり、先日、再教育講習を受けてきました。やはり、必要に迫られて聞くと、疑問点や知りたいことが良く頭に入ります。失効させた3人で受講し、休憩時間に、あーでもない、こーでもない、と火薬関連(特に、法令)の話をしていました。


講習中、発破のビデオが流されました。講師の方も、受講者が飽きない様に工夫されています。
それで思い出したのが、Dyno Nobel 社の「Dance of Detonators」というビデオ。以前、先輩に見せていただいた際、「Dance と名づけるセンスが良い」と言われたのが印象に残っています。作業服もカッコいいですよね。センスが違います。

今ではYoutubeにも出ています。 一度、このような大発破を体感したいですね。




2012年10月9日火曜日

Endangered

実践ビジネス英語 2012.10.3 の Vignette より。
Sad to say, but I've joined the 65 percent of American office workers who either eat at their desks or don't take lunch breaks at all.

There's so much pressure to be productive and perform now days. That means fewer and fewer people can spare the time for an actual lunch break. Lunch hour is on American's endangered list.
私の場合、ヒマな時はネットを見たり、ソフトやハードをメンテして休んでいる事が多いのですが、普段は大体仕事をしています。ランクの低いものを片づけることもあれば、急ぎの仕事をしたり。寝ることはほとんどないですね。現場でも、食べる間にメールをチェックし、返信したり電話したりです。食べ終わったら、また作業の続きを始めたり、移動したりします。同行者がいれば1時間きっかり休みますけど。そういえば、隣の後輩も、昼休みに仕事をしていますね。休めば帰るのが遅くなる、午前中の効率の悪かった分を取り戻す、などの意識が働いているのだと思います。そういう意味で、vignette で指摘されているように pressure がかかっているのでしょう。

それに対し、「今まで以上に効率よく!」と言われる executives は、現在のツールの使い方や種類を御存知ないので、そういった抽象的な指示や目標値しか出せません。それを数字で具体化するのは実動部隊であり、そこに pressure がかかるのだと思います。そこでは、ノマドやテレワークも害になるのです。

効率を求め、ネットと電話で他支店の技術者と情報を共有し、仕事を進めるのが常識となりました。その時々で特定の分野に特化した技術者が選定され、仕事をするのです。聞こえは良いですが、顔も知らない方とメールと電話だけで進める仕事、出張しなくて済みますので効率は良いですが、とても寂しいですね。テレビ会議もイマイチです。やはり顔を突き合わせて話をしないと。

65%という数字が実際どうなのかは分かりませんが、今のまま景気低迷が回復しないと、こういうスタイルが増えていくのでしょう。時代の流れかもしれません。

2012年10月7日日曜日

VLF-EM 法が分からない その4

電磁気学の本をパラパラ見ていました。

何となくですが文章を追っていくと、ああ、こんなのがあったかもという程度。
知りたかった「VLF局からの1次磁場は、水平方向(Hy)に変動」「伝導体の走向が発信局方向と直交する場合、鉛直成分0」「水平磁場と同位相の垂直磁場成分と90度位相のずれた成分を測定」を解決する手掛かりは見つかりませんでした。
概念的には、東京地学協会の地学雑誌に載っている資料が良いと思います。上記問題の内、「水平方向に変動」の部分と、「鉛直成分0」については概念を理解できるのではないでしょうか?
http://www.geog.or.jp/journal/back/pdf117-6/p997-1010.pdf

複素数の本を見ていたときに、電気の流れについて書かれたものがありました。そこで「ああ、解に実部と虚部があるんだな」と実感。それぞれの測定結果と、実部、虚部の関連性も分かっていないことに、初めて気付きました。まだまだです。

うーん。これは少し時間がかかりそうです。このプロは身近にいませんので、解決は気長に待つしかありません。
ま、どこが分からないかが整理できただけでも良しとしましょう。

2012年10月6日土曜日

VLF-EM 法が分からない その3

複数の断面で短時間にデータを得られる点、簡単なフィルター理論で2次元断面の値を算出できる点、これらが VLF-EM 法の長所でしょう。

そのフィルター理論の資料が届きました。Karous-Hjelt filtering と呼ばれている1983年の資料です。filter に名前が付き、検索でも多くの図表・文献が引っかかることから、有名な資料なのでしょう。
Karous M and Hjelt SE (1983) Linear Filtering of VLF Dip-angle Measurements. Geophys. Prospec. 31, 782–794.

理論と実験から係数を決定し、それをスムージングして、電流密度を求めています。磁場(測定値)と電流密度(計算値)の関係は、Biot-Savart law から導いています。また、最初の導出過程で、2次元鉛直断面、紙面に直方向の電流を仮定しており、それによる磁場の鉛直成分を扱っています。それが VLF の結果の解釈、ひいては測線計画の制約の一つとなっているようです。

早速、生データを EXCEL で filtering し、WADI の filtering 後の結果と比較してみました。
が、合いません。どこが違うのか?と考えながら、さらに計算すること3日。結局、一致しませんでした。

困ったなー、と思いながらネットを検索していると、KHFFILT というソフトが引っかかりました。これ、計算部分のソースも公開されています。中身を見ると、やはり計算過程は間違いない、しかも、計算結果は EXCEL とほぼ一致します。(こちらの方が文献より小さな桁まで算出した係数を使用していますので、丸め誤差が出ます)。また、このソフトからは XZ 座標と filtering 結果が並びで吐き出されるので、後で扱いやすい!
https://wiki.oulu.fi/pages/viewpage.action?pageId=20677974

結局、WADIのフィルターに別の計算がかかっているのかどうかよく分かりませんでした。マニュを見る限りは同じ計算なのですけどね。ま、とりあえず生データを使用するようにしましょう。

あとは電磁波の基本の復習です。

2012年10月4日木曜日

VLF-EM 法が分からない その2

物理探査学会「物理探査ハンドブック」を読んで、分からないところを抽出しました。

  • VLF局からの1次磁場は、水平方向(Hy)に変動。・・・垂直偏波?
  • 地下に異常物質があった場合は2次電流、2次磁場が発生。
  • 構造の走向が発信局方向と一致したときに鉛直2次磁場が最大。走向が直交する場合、鉛直成分0・・・???
  • 発信局と直交方向に測線を設定。
  • 水平磁場と同位相の垂直磁場成分と90度位相のずれた成分を測定。・・・???
  • 水平成分と垂直成分の合成ベクトルは楕円を描く。
  •  楕円の長軸と水平軸のなす角 (tilt angle)θを求める。
  • tanθ=Rcos⊿=Re(Hz/Hy):実部、real part (in-Phase:  同相成分、%で表すことが多い)
  • 楕円長軸と短軸の比(ellipticity)εを求める。
  • ε= Rsin⊿=Im(Hz/Hy):虚部、imaginary part (quadrature, out-of-phase : 離相成分、%で表すことが多い)
  •  ここで、Rは垂直磁場と水平磁場の強度比 R=|Hz/Hy|、⊿は位相差 ⊿=θz-θy である。
WADI は Karous-Hjelt Filter を採用し、任意の間隔(深度)で 上記の2つを書き出すことが可能だそうです。εにfilterをかけてもそのままですが、tilt angle にかけると、電流密度になるそうです。電探の導出で使うA/m2と同じ単位でしょうか?これについては論文待ちです。届けば分かるでしょう。

VLF局での電磁波の出され方(偏波)は良いとして、構造と鉛直2次磁場の発生の仕方を理解しないといけないようです。同走向・鉛直構造で鉛直磁場の発生は理解できるのですが、走向直交・鉛直構造で発生しないのは理解できい、ということは理解の仕方を間違えているのでしょう。
また、鉛直成分の測り方も何故そうするのか理解できていません。

この2点、理解できるようになるかどうかは分かりませんんが、とりあえず電磁波の基本から見直す必要があることが分かりました。

2012年10月2日火曜日

VLF-EM 法が分からない


ABEM 社の WADI 。22年前の機械です。

法面の調査で使用する予定です。
電極打てないので電探ダメ、熱赤外は近すぎてカメラに収まらないのでダメ、吹付け背後に空洞のがあり振動系もダメ。ということで VLF-EM 法を提案しました。

VLFは10年以上前に1度だけ実施した事があります。部長様に「ボタン押すだけで簡単だから、現場管理のついでにやってきて」と言われたように思います。確かに、数kmの調査でも、ただ歩いてボタンを押すだけなので非常に簡単でした。結果も、ある箇所で異常値が出た、出なかったの判断程度でした。トンネルの調査であり、電探や弾性波のついでにサービスで実施といった扱い方でしたので、部長様もそれほど気合いを入れていなかったのでしょう。

その後、「空中で何を測っているのか分からない」という後輩がいたり、「英語は苦手」という先輩もいたりして、どんどん出番の少なくなった測定器でした。

ところが昨年、ある先輩が電流密度の断面図を書いているのを見ました。比抵抗のような2次元コンター図が VLF でも描けるのです。原理はまったく分かりませんが、確かに物理探査学会「物理探査ハンドブック」や WADI のマニュアルに、深度方向の算出方法が書かれています。これは驚き。すぐにマニュアルを最初から読みなおし、計算式の出典を注文しました。

マニュアルを読んでいくと、通常、測定時に表示されているのは測点間隔で filtering された値とのこと。これ、完全に生データだと思っていました。「測点間隔なんて関係ないから」と言われ、適当に入れていたような気がしますが、まずかったですね。
ただ、PCへ取り込んだ filtering 後のデータは、表示値とやや異なります。また、生データを利用した計算値とも異なります。なにか、まだ処理をしているのでしょうか?計算の仕方が間違っているのでしょうか?よく分かりません。資料が来るまで待つしかないようです。

とりあえず、駐車場でテストを行い、WADI の filter を利用して深度方向の値を算出、結果を MVS で可視化しました。


ま、こんな感じで電流密度のコンターが書けるのでしょう。と言いながら、マイナスも含まれているので、電流密度と言って良いのかも分かりません。方向が決められているのでしょうか?単位はA/m?そんなレベルです。

早く理解しないと。
10年以上、損をしていたような気がします。