2013年8月25日日曜日

現場透水試験と浸透流解析

「現場透水試験は必要ない。浸透流の逆解析で透水係数を同定すればよいではないか?」

先日、このような相談が私のところに来ました。
極端ですが、ある意味感心しました。

ただ、個人的には反対。
透水係数の妥当性を示す材料(透水試験による透水係数の分布範囲)が欠けると、それはその分布(一連の透水係数を有するとみなせる土質・地質の分布=水理地質)の妥当性を示す材料も同時に欠けるということに繋がります。土質・地質分布の推定誤差を、(分布が正として)透水係数のみに押しつけるようなモデル化は、新たなデータが追加された場合に破綻する可能性が高いのです。バランスが大事でしょう。

初めに設定した透水係数が逆解析結果と大きく異なる原因としては、以下のことが考えられます。
・推定した土質・地質分布が実際と大きく異なる。
・数少ない結果より透水係数が設定されている。(局所的な値が反映されている、粒度のみから推定されている、必要な試験条件を満たしていない、etc)
・同定するデータの種類・量が少ない(計算結果の精度の問題)。

通常は、得られた透水係数の幅を考慮し、モデルをキャリブレーションして行きます。どうしても観測結果を再現できない場合、またはキャリブレーション結果が透水係数の幅や一般値を大きく逸脱する場合、分布の推定を誤っている可能性を疑います。そして、分布を再検討し、計算を続けます。つまり、キャリブレーション作業は、現場で得られた透水係数と推定された土質・地質分布の両者の妥当性を担保する作業だといえるでしょう。

地質屋は現場で観察した根拠をパズルのように組み合わせ、矛盾なく説明できる土質・地質モデルを作成します。しかし、その矛盾のないモデルは大抵複数できてしまいます。その中でも最も可能性の高い(と思う)もの1枚だけを土質・地質モデルとして残します。キャリブレーションがうまくいかない場合は、構築した理屈に沿ってモデルを微修正するか、頭の中に残された2枚目のモデルを試すことになります。それでも合わないなら、計算が合うのはどういった土質・地質分布かを考え、見落とし箇所にあたりを付け、再び現場に戻ります。計算が、自分の推定した土質・地質分布の誤りを指摘してくれるわけです。
これは水の計算だけでなく、変形も同じ事です(水のほうがはるかに単純なので、同視はできませんが)。特に、三次元解析では土質・地質分布が重要ですね。個人的には、通常は透水係数や変形係数、c・φなどの設定誤差より、土質・地質分布の推定誤差のほうがはるかに大きいと感じています。

自然を計算に乗せて解釈したいのであれば、現場をよく歩くこと、原位置試験を実施することなど、基本をおろそかにしないことが近道だと思います。


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