2015年7月25日土曜日

観測井戸と透水係数

久しぶりに、ゆっくり文献を読んでいたのですが、なかなか面白いものがありました。

Nadège Baptiste1, Robert P. Chapuis, What maximum permeability can be measured with a monitoring well?, Engineering Geology, Volume 184, 14 January 2015, Pages 111–118

観測井戸のつくりで透水試験結果が大きく変わりますよ。何も考えずに設置してはダメですよ、透水係数を過小評価してしまい、結果、揚水試験の方が透水試験が高くなるスケール効果の一因となりますよ、といった内容。

驚いたのが、水の中の微細な泡の有無で透水係数が1オーダー変わる点。
あと、ストレーナーの影響を数値計算と理論解で比較している点。以前、私も実施しましたが、浸透流の分野でも案外一般的なのかもしれません。
ストレーナーの影響(その4まで)http://phreeqc.blogspot.jp/2014/09/blog-post_22.html


以下、内容の備忘録です。意訳あります。


1. introductuon
K1:スクリーンの透水係数
K2:フィルター材の透水係数
K3:原地盤の透水係数

2.観測井戸設置の基本ルール
2.1. 粒径加積曲線の作成
原地盤の粒径把握。
細粒分が抜けているとか、2層が混ざっているとか、評価方法あり(Chapuis et al., 2014)。

2.2. フィルター材の選定
原地盤の均等係数、D50などによって、推奨されるフィルター材の径が変わる(Table 2)。

2.3. スクリーンスロットサイズ
MWでは、フィルター材のD10より小さ目のスクリーンスロット。

2.4. MWの設置
セントラライザーやタンパーの使用。
ベントナイトやグラウトがフィルター材へ侵入しないように、2層の干渉区間を設ける。

2.5.記録
設置記録、15cm毎程度。
きちんと記録すれば4時間ぐらいかかるが、多くの施行者は10分~30分と低品質。

3. スクリーンの透水係数
3.1手法
タンク中にMWを設置。低レイノルズ数で、乱流にならない程度の水位差を設け、6段階の流量を設定。(Fig.2)
3.2. Thiemの式
3.3. 数値解法

4. K1、K2、K3の影響
4.1理論解
4.2数値解

5.結果
5.1. K1
K1=1×10-4m/s前後(タンクに入れた。直後の水)
K1=1×10-3m/s前後(2日後の水)
微細なエアーを含んでいると、透水係数は1オーダー落ちる。
現位置では目詰まりにより、さらに落ちる。

5.2. K1.k2の現位置試験への影響
5.2.1. フィルター(充填材)のない場合
現地盤のK3に対し頭打ち(Fig.4)。VP50位のMWだと、ktest=5×10-2〜10-3m/s。目詰まりがあると10〜100倍低くなる(10-4〜10-5m/s)。

5.2.2 フィルター(充填材)のある場合
K1=1×10-4m/s、目詰まりで10-5m/s。
現地盤のK3がスクリーンのK1か、フィルター材のK2 を超えた時点で頭打ち(Fig.5)。

※K3が10-2〜10^0cm/sオーダーで頭打ちになっているので、実際の地盤(10-3〜-5cm/sオーダー主体)では、あまり関係ないでしょう。高透水部のみ気を使えば良いでしょう。

5.2.3 スラグ試験の数値解析例
5.2.4 フィルター材の選定例

6. 考察
透水係数は幾つかの手法、スケールで評価される。
小スケール:土質サンプルの粒径より推定(信頼できる手法の前段階)
中スケール:透水試験
大スケール:揚水試験

MWにおける透水試験でのスクリーン・フィルターの影響を論じたが、同じMWで揚水試験をすると、異なる影響が出るだろう。

大スケールの方が透水係数高い。いろいろな理由が推定されている。
しかし、各々の透水係数の品質については疑問視されていない。

MWの品質の悪さが、いかに透水係数を低く見積もるか(中スケールの透水係数を減ずるか)、そして、それが人工的なスケール効果を生み出すことに寄与するであろうことについて論じた。

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