2015年8月23日日曜日

ArcGIS の地下水解析

ArcGIS のSpatial Analyst に「地下水解析」があります。

見つけたときに「なに、これ,?」と思いヘルプを見ました。平面2次元浸透流の、差分法に近い計算式です。が、具体的な操作方法がよくわかりません。サポートも詳細を把握されていなかったようで(Arcで地下水を計算したいと思う人がレアなのでしょう)、やり取りしながら試してみました。

通常の浸透流ではパラメーターを設定し水頭を求めることが多いのですが、これは異なりました。水頭、透水量係数、有効間隙率を設定し、流向・流速や水収支を計算します。流向・流速は、それぞれラスターの各セル内に格納されます。Ver.10.3よりセル値のベクトル表示が可能となったようで、流向ラスターに流速ラスターを magnitude として設定すれば、ベクトルが作画されます。
また、流向・流速より任意点からの粒子追跡が可能で、さらにそれを使った移流分散計算結果がTXTで書き出せます。TXTには時間・濃度・距離などが入っており、それを使用して任意時間の濃度を可視化できます(結果を見る限り、近似式の方を使用しているようですね)。

通常の浸透流よりは制限が多く、特に水頭を正しく与える必要があるため、利用法は限られてくると思われます。地形・水系からkmスケールで、流向を読み取りたい、汚染物質がどの方向へ流れやすいか知りたい、といった机上調査に利用できそうです。GIS ベースなので計算時の座標を気にしなくて良い点、結果の可視化(地形などとの合成)の手間が省ける点などは、通常の浸透流と比べて有利でしょう。

簡単な2次元差分はEXCELでも解けますが、Arcなら透水量係数の変化として構造物の影響を扱えます(疑似3次元のようなもの)。水頭入力は独特ですが、理論上これもまた然りといったもの。
手を動かしてみると、多様な考え方に出会えます。蛙が大海を知るためには、自ら動き続けないといけませんね。

2 件のコメント:

  1. 突然のご連絡失礼いたします。大変興味深く拝読いたしました。ArcGISでの地下水解析に興味があるのですが、水頭、透水量係数、有効間隙率などのデータはどのように作成されたのでしょうか?また、DEM等の一般的に整備されているGISデータを用いて作成することは可能でしょうか。お手数ですが、ご教授頂けますと幸いです。
    よろしくお願いいたします。

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  2. このケースでは、水頭は以下の手順で作成しました。
    https://phreeqc.blogspot.com/2015/08/arcgis.html

    透水量係数、有効間隙率はポリゴンから与えました。

    DEM等は必要ですが、それだけですと地下の情報を与えられません。何かしら、思想やデータが必要になります。

    その他、操作上の不明点があれば、サポートに問い合わせられたら、すぐに解決できると思います。レス速く、優秀です。

    Spatial Analyst の「地下水解析」は、浸透流解析などのプロセス型決定論的モデルとは大きく異なります。上記の通り、初期段階の机上調査などに利用可と考えています。

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