2016年8月8日月曜日

山地の増幅特性

以下の文献に興味が惹かれました。

栗田ほか (2005) 山地形における地震動の増幅特性、日本地震工学会論文集 第5巻、第3号
http://www.jaee.gr.jp/stack/submit-j/v05n03/050301_paper.pdf 

現地の微動測定結果を解釈する際、地形と地質の両面から考察する必要があります。が、切り分けるのは難しいと思います(サイト特性という言葉もありますので)。この文献では、5つの地震計をすべて岩盤に設置することにより、地形の影響に絞って考察できるように工夫されていました。論点が地形のみに単純化されて分かりやすいと思います。(そういえば、地盤工学会「ジオテクノート9 地震動」にも似たような話が出ていました。http://phreeqc.blogspot.jp/2014/02/blog-post_21.html

結論は以下の通りとされています。
  • 観測記録の分析から、山頂の増幅率が非常に大きくなり、特にある周波数以上では、常に増幅する 様子が見られた。
  • 地中の観測記録には、山地形内の反射波によって打ち消されたと考えられる周波数成分が存在する。
  • 数値シミュレーションでは、山頂付近に波が集中して増幅率が大きくなる特性が再現できた。 
  • シミュレーションの分析より、伝達関数が谷となる周波数では、地中地震計の位置が節となる挙動 をしていることが分かった。
  • 山地形における斜面の形状に応じて増幅の度合が異なり、肩のような形状があると大きく増幅する ことが分かった。
通常使用している表層地盤での「増幅特性」とは定義が違うのでしょう。これらの関係はここでは明確にされていませんでした。
個人的には、最後の「肩のような形状」で大きく増幅する特性に興味が惹かれました。この断面とほぼ同じ形状の現場での観測結果を有していますが、あくまで「地質」によるの増幅として捉えていました。「地形」の影響もあると考えないといけないのですね。
これを判別しようとすると、シミュレーション上の材質を部分的に岩盤から土砂へ変化させ、結果を追っていくという流れになると思います。が、その技量は私にはありません。いえ、大部分の実施は可能ですが、与える波の形状の選択や境界条件の考え方といったコア部分の知識・ノウハウが私には不足しています。この文献を読んでいても、そのあたりのことが分からず、 課題として浮き彫りになりました。

このあたりのことを十分理解していないと、調査結果の正しい解釈もできません。
早々につぶしておきましょう。

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